新築マンションを検討する人がみんな不満を抱えている話。
公式HPなのに価格すら載ってない、どういうこと!?と誰もがツッコミを入れる訳です。
この情報社会にも関わらず、公式HPに情報がぜんぜん公開されていないない原因について、中の人視点で考えてみました。
1.欲しい情報が掲載されていない
まず、検討者が欲しい情報を考えて見ましょう。
一般的に不動産の価値を決めるのは「3P」と言われており、下記の3点です。
・立地(Place)
・価格(Price)
・間取り・仕様(Plan)
では、上記の欲しい情報がどこまで公式HPで公開されているのでしょうか。ざっくり印象は下記の通りですが、結論、ほぼ欲しい情報は載っていません。
・立地 :地図は載っている。駅徒歩分数も載っている。
・価格 :ほぼ載ってない。最低価格のみ掲載する物件はあるが参考にならない。
・間取り:一部しか載ってない。販売終盤になると載ることがある。
・仕様 :ほぼ載ってない。販売終盤になると概ね載る。
もちろん、最終的な購入判断には現地確認やモデルルーム見学などが必要にはなりますが、ネットで入手したい一次情報は上記の通りだと思います。
「興味を引く物件かどうかを判断するに足る情報」が得られれば十分でしょう。しかしながら、その情報すら十分には掲載されていないのが実態というわけです。
2.モデルに行かなければ欲しい情報は手に入らない
上記の欲しい情報を手に入れるには、販売センター(モデルルーム・サロン等と言ったりします)に往訪するしかありません。
2時間〜3時間以上にも及ぶ接客営業を受けながら押しの強いPRを受け続け、ようやく手に入る戦利品が、パンフレットや図面集、価格表です。
そこまで時間をかけて情報を得た結果、思ったよりガッカリな物件で検討をやめてしまう、なんていうこともしばしばあると思います。
なんと煩わしいことでしょうか。なぜ、こんなことになっているのでしょうか。
3.なぜこんなに煩わしいのか、情報が載っていないのか
理由は、接客機会を得たいからです。事業主としては、「HP情報だけで判断されたくない!営業マンに接客させてくれ!」と考えているわけですね。
忙しい人や、コミュニケーションや押し売りが苦手な人からしたら堪らない話です。
筆者自身、ヤ◯ダ電機で店員に声をかけられるのが激しく嫌いな人間なので、すごくよくわかります。
その理由をもう少し掘り下げて見ましょう。⑤⑥はかなり裏話です。
①魅力を最大限PRしたいから
マンションの魅力って結構複雑で、箇条書きのスペックだけじゃわからないところも多いです。
特に最近は、「住宅」を売るというよりも、「体験」を売る方にシフトしており、「こんな素敵な生活ができますよ」という価値を臨場感を持って伝えるのがモデルルームの役割になってきています。
例えば「HARUMI FLAG」を想像して見ると良いんですが、あの大規模な街づくりの世界観をHPで伝えるのってやっぱり限度があって、スケール感のあるモデルルームに足を運んでもらってこそ、伝えられるものがあったりします。
1,000戸の物件も3,000戸の物件も、HP上ではどちらも同じ「大規模物件」ですが、実際にしてみると圧倒的な差があります。そのスケールの違いが、そのまま物件の魅力、世界観になっていたりします。
せっかくの魅力があるなら、余すことなくそれを伝えたい、という気持ちも理解できますよね。
②欠点は払拭してあげたいから
スペックを箇条書きにすると、一見して欠点になるようなことでも、きちんと理解すると一転してメリットに見えてきたりします。
例えば「駅徒歩分数」ですが、駅徒歩10分って、駅前物件が乱立する現代では比較的遠い印象を受けますよね。しかし、ターミナル駅が最寄りの場合は少々事情が違ってきます。駅前は飲み屋や商業店舗が集積しており、便利ではある一方で賑やかすぎて、住環境としては本来適しません。むしろ数分離れた場所の方が、閑静な住宅街として地元では評価を得ていたりします。
そうした事情をきちんと説明するためには、カタログスペックだけで判断されないよう、接客機会を設けることできちんとした情報提供を行う必要があります。
③そもそもマンションの検討方法のわからないお客様も多い
販売センターに来場されるお客様で、本当に具体的な検討が進められる方なんてほんの僅かです。殆どの方がマンションを探し始めで、何から検討したらいいかわからない、という悩みを抱えながら来場されます。
こうした方々にはやはり、まずは来場していただいて、プロ目線で総合的なご相談に乗ってあげることが必要になります。そうして初めて、自分の欲しいマンションがわかってくるのです。
それこそが、営業マンの真の役目と言ってもいいでしょう。
④情報をたくさん載せればいいってもんでもない
例えば、図面集を全プラン分HPで公開しようとすると、結構無理があります。
物件規模が大きくなると、プラン数は20〜30、多いと50プランほど存在する物件も世の中にはありました。これを全てHP上で掲載すると、大変なコストがかかりますし、お客様も何をどう見て良いのか返ってわかりづらくなってしまいます。
お客様の事情それぞれによって提供すべきおすすめ情報は異なりますので、下手に自分で資料を眺めるよりもプロの営業マンがしっかりと相談をした方が、結果的には良いプランが見つかったりします。
⑤顧客反応を見たいから
ここからは少し内部事情的な話。
みなさんは価格決定ってどのようにされてるかわかりますか?
詳細は別記事で紹介しようと思いますが、価格はあらかじめ決まっているのではなく、お客様との接客をある程度行ってから、決定します。実のところ売主は、みなさんとの接客を通じて、価格を調整しようとしているのです。
問い合わせや接客の感触が良ければ、「売れそうだから高くしよう」とか、逆に問い合わせ件数が少なかったりお客様の反応が悪ければ「ちょっと厳しそうだぞ、安くしよう」とか、みなさんに価格をちょい見せしながら、探りを入れてるのです。
「参考価格」とかいう歯抜きの価格表を、ざっくり100万円単位で見せられたことあり、ませんか?「要望書」とかいう謎の書類を出させられたりしたことありませんか?
みなさん、アレ、反応見られているんですよ。(とりあえず「高い!」って言っておいた方がいいですよ。(冗談))
⑥競合に情報を取られたくないから
不動産の競合バトルはかなり熾烈です。お客様は必ずといっていいほど競合物件も見学していますから、物件情報をあの手この手で奪い合い、相手物件を潰せるトークをいかに事前準備しておくかが勝敗を分けます。それはまさに情報戦であり、日々更新される価格情報やキャンペーン情報を掴むために、お客様に紛れてスパイを送り込むことがザラに行われています。
そんな環境下において、HPに物件情報をさらけ出すなど、もはや弱点をさらけ出しているかのよう。なるべく情報を秘匿にすることがもはや定石となっています。
4.モデルへ行くことは意味がある
上記を見ているとだんだんと面倒な仕組みに思えてきますが、必ずしもそうではありません。
やはり不動産は個性豊かで一つといって同じものが無く、カタログスペックだけで判断するのは非常に勿体無いです。
またプロの営業マンはきちんと頼りになります。不動産知識の浅い方ほど、まずはテキトーなマンションのモデルルームに足を運んでみて、色々と基礎を教えていただくのがいいと思います。
そこで押し売りが激しかったり、他者否定が激しかったり、こちらの意図を汲んでくれない営業マンに当たった場合は、あんまり信用しないほうがいいでしょう。一生に一度の買い物ですから、信用できない方からは買わない方がいいです。何か不都合が生じます。
できる営業マンほど、すごく良く相談に乗ってくれますのでご安心ください。
5.ということで。
公式HPはまああくまで、イメージサイトくらいに思っていた方が良さそうです。とっとと足を運んで話を聞いた方が早い、ということでした。
とはいえ不親切は不親切。いつかこんな風習が無くなって、広く公平に情報が公開される日が来ることを願っています。